消化器内科
2025/10/28

市民公開講座「知っておきたいお腹の病気 〜診断と治療の現況〜」質疑応答

第126回 日本消化器病学会九州支部 市民公開講座
「知っておきたいお腹の病気 〜診断と治療の現況〜 あなたの悩み・疑問に答えます」
日 時:令和7年10月4日(土) 午後2時〜午後4時半
場 所:社会医療法人敬愛会 中頭病院 2F中頭ホール
定 員:なし
参加費:無料
質疑応答

膵臓がんの症状はどのようなものがあるのでしょうか。またその症状が分かった頃には手遅れなのでしょうか?

腹痛と背部痛、体重減少があります。症状が出現している場合は進行膵癌が多く、手術ができないステージが多いです。

常に軟便で腹痛を感じることが多いです。どのような食生活を心がけて、何を気をつければ良いでしょうか。

軟便の原因として高脂肪食や香辛料、アルコールやカフェインの取り過ぎが挙げられます。またストレスや不眠などが自律神経を乱し軟便の原因となることがあるため、食事内容や生活習慣を見直すことが必要です。しかし慢性的に下痢や軟便が続く場合は、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患、大腸癌などの可能性もあるため、一度病院を受診することをお勧めします。

胃が骨盤より下がっていると、20代の時に言われた。手足は細いけどお腹(腸がある辺り)がスイカみたいに大きい。治せるのですか?

胃下垂の状態と思いますが、病気では無いので通常手術などの治療はおこないません。胃もたれ、胸焼けなどの症状があるならそれに対する内服薬を投与します。CTなどでスイカみたいにおなかが出る病気が他にないかを調べて問題ないようなら、腹筋をきたえたり、やせの体型がよくないので、体重をふやして適正体重になるように体重管理をおこなうことが長期的には必要です。1度病院受診してご相談ください。

脂肪肝から肝臓がんへ移行すると聞いたことがありますが、自分が脂肪肝なのかどうかはどのように見極めたらいいでしょうか。脂肪肝の人特有の症状などあれば知りたいのと、日頃からどのようなことに気をつけたらいいですか?

脂肪肝は腹部エコーで診断することができます。症状は基本的にありませんが、脂肪肝の方は肥満・高血圧症・糖尿病・脂質異常症を合併することが多いです。普段の生活で気をつけることは生活習慣病と同様に栄養バランスを考慮した食事や過度の暴飲暴食・飲酒を避けることです。

脂っこい食事を摂ると、お腹を壊すことが多いのですが、病院を受診した方が良いのでしょうか?
酸味の強いものを毎日摂取することは、消化器にとっては良くないですか?

高脂肪食は大腸の粘膜を刺激して腸管内に水分を過剰に分泌したり腸管の蠕動運動を過度に活発にするなどして下痢を引き起こします。これは健康な人でも起こりうる生理的な反応であり、病気ではありません。一時的な症状で自然に回復するのであれば経過観察でいいと思われます。酸味の強い食事は胃酸過多の原因となり、胃炎や胃潰瘍のリスクとなります。胃の不調があるときには毎日摂取することは控える方がいいでしょう。

気になったら受診をと仰いますが、お腹というより胃あたりが痛くて受診しました。レントゲン検査までしましたが腹痛と診断され、これで来たの?と言われてしまいました。何か症状があったらというより、明確な内容が知りたいです。刺すような痛み?我慢できない痛み?など。

胃のあたりの痛みが気になって受診されたと思います。このような症状で受診される方は多くいらっしゃいます。検査をしてみないと原因が分らないので、基本的には血液検査、お腹の中の臓器の異常を調べる腹部エコー、胃カメラ等を行ないます。原因が分ればそれに合った治療を行ないます。医者が「これで来たの?」という言い方・態度には問題があります。患者に寄り添った診療を行なっていないと思われます。

40代に大腸カメラを2回受けたことがありますが、特に異常はありませんでした。大腸カメラは定期的に受けたほうがよりですか?受けたほうが良い場合、何年毎に検査したほうが良いですか?目安があれば教えてください。

米国ガイドラインや日本消化器内視鏡学会でも異常なしであれば10年は再検査は必要ないとされております。ただし、検診としての便潜血検査は毎年ないし隔年での検査を受けていただき、陽性結果であれば大腸カメラの精密検査を受けていただく事が大切であります。特にご家族に大腸癌罹患者がおられる場合や炎症性腸疾患の罹患者がおられる場合は必ず、便検査は受けてください。

ピロリ菌を除菌して2年経ち、今年も胃カメラの検査を受けましたが、胃の状態が良くなるまで時間がかかるのでしばらく毎年胃カメラをするように言われました。どのくらいの年数を目途に考えればいいでしょうか。また胃の状態が回復しやすいように日頃から食生活や日々工夫できることを教えてください。(コーヒーはなるべく避けた方がいいでしょうか?)

ピロリ菌の除菌を行なっても胃がんのリスクは残ります。除菌した時点ですでに内視鏡では確認できない微小な胃がんが発生していた可能性があります。3-5年経てば内視鏡で確認できる大きさになります。ですから除菌後5年間は毎年胃カメラを受けることを勧めます。長期的な観点から、胃がんのリスクは萎縮(慢性胃炎の果て)の程度に大きく影響されます。毎年受けた方が良いのか、2年に1回で良いのか、主治医と相談されることを勧めます。食事に関しては、香辛料を多く含む刺激の強いものは控えて下さい。コーヒーにはカフェインが含まれており、人のよっては胃酸過多の症状が出ることがあります。症状がなければ控える必要はないと思われます。

・膵臓がん疑いと言われたら、どんな検査をしますか?
・生活習慣の改善とかあれば教えて欲しいです。
・膵臓が悪かったら、背中が痛たくなるとか聞いたことがあるんですが、他にも普段の生活から気付けることはありますか?
 便の状態も関係しますか?

超音波内視鏡検査(EUS)、MRCP、造影剤を使用したCT検査を行います。 飲酒と喫煙、肥満、糖尿病が膵癌の危険因子であるため生活習慣は上記に気をつけることが重要です。それ以外で特に気をつけることはありません。
膵臓が悪くなると、膵臓からの消化酵素の分泌が不十分となり、便が白っぽくなることがあります。

左下腹部に数年前から、虫刺さされの様な腫れが一個出来て、ソレがかさぶたになっていたのが、ちっともかさぶたが取れなくて、くっついたまんまになるので、皮膚科に行くと、ワセリンで取れることがあるからと、軟膏が出たのですが、一月二月経っても治らず、赤くなったまんまでした!丁度そこが、お腹が空くと少しチクチクと痛くなることがあるのです。ご飯を普通量食べると治るのです。少し食べても治ることも多く、治らないこともあるので、そんな時はまた食べてみると治ってしまったので、そのまんまにしていたら、昨年冬の終わりから、時々左の股関節が痛くなります。ジーンと奥の方が痛い感じになり、早く動作したり、孫を抱っこしたりする時にとても重くてモテなかつたり、腰がとても痛くなったりしていたら、七月にめまいや頭痛で倒れてしまいました!コレは大腸がんなのか?と心配してますが、どうでしょうか?もう転移したのかと思って心配です。

非常に心配ですね。虫刺さされの様な腫れ?(皮疹、発疹)と腹痛を関連して考えるのであれば、帯状疱疹(通常は片側性で多発性)も考えられますが、股関節の痛みは関連ははっきりしません。一度内科を受診していただき、画像検査(腹部超音波、CT)を受けていただくのがよろしいかと考えます。

・膵臓がんの早期発見方法は?
・膵臓の嚢胞とがんは治りますか?

膵臓がんの早期発見のためには、“腫瘤”がみえる前の段階、膵管から膵癌が発生するため膵管の変化である、膵のう胞や膵管拡張を認めたら精査することが重要です。一度の検査で膵癌がなくても、膵のう胞をフォローすることが必要です。膵臓の嚢胞は例外もありますが基本的には消えません、治ることはありません。

憩室について教えてください。盲腸のような痛みがあり、大腸検査をしたところ見つかりました。毎日爆弾を抱えているようで、気の晴れないまいにちです。こらからどんなことに気をつけて生活すればいいのか、どんな症状がでたら病院に行けばいいのか教えてください。

憩室自体はお薬できえることはありませんので、炎症を予防することが重要です。①食生活の改善(食物繊維を多く、水分摂取1.5L-2L、バランスいい食事)、②排便習慣を整える(便意を我慢しない)、③適度な運動、④生活習慣の改善(適切な飲酒量、睡眠、喫煙はさける)など。腹痛があれば、症状が軽いうちに早めに医療機関受診してください。

胆道がん術後の補助化学療法の治療とは?

術後の補助化学療法とは、手術のあとに行う追加治療のことです。手術で見えるがんは取り切れても、目に見えない小さな癌の「種」が体のどこかに残っている場合があります。術後補助化学療法はその「種」を芽吹かせないようにする治療です。胆道がんは、手術ができても再発しやすいがんです。術後補助化学療法を行うことで、再発の確率を下げられることが分かっています。具体的には、S-1(エスワン)という飲み薬を副作用に注意しながら半年間内服します。

いつも大腸憩室炎に悩まされてます。大出血した事もあり、完治する方法はありますか?

憩室がある腸を部分的に切除することが完治する方法ですが、合併症もあるため適応は慎重に判断します。一般的に憩室炎を繰り返し、そのたびに改善に時間を要する、穿孔、膿瘍形成、膀胱などと瘻孔をつくっている、出血が持続し、血管治療等でも止血できない、場合などです。主治医の先生に良く相談されてご検討ください。

女性ホルモン療法と膵がんは関係するのですか?

女性ホルモン療法の使用が膵がんに与える影響(膵がんの発生が増加するのか、減少するのか)に関してはまだよくわかっていません。

膵嚢胞が確認されましたが、生活上気をつけることはありますか?

膵のう胞があると言われたら、一度は精査をすすめます。膵臓がんの早期発見のためには、“腫瘤”がみえる前の段階、膵管から膵癌が発生するため、膵管の変化である膵のう胞を認めたら精査することが重要です。一度の検査で膵癌がなくても、膵のう胞をフォローすることが必要です。
膵臓の嚢胞は例外もありますが基本的には消えません、治ることはありません。飲酒と喫煙、肥満、糖尿病が膵癌の危険因子であるため生活習慣は上記に気をつけることが重要です。それ以外で特に気をつけることはありません。

肝臓にのう胞があるのですが取れたりしますか?軽度の脂肪肝はどうしたらいいですか?

肝臓の嚢胞は基本的には無症状であり経過観察可能なことが多いです。治療を考慮するケースは嚢胞が大きく症状がある、感染を合併している、嚢胞内部に腫瘤がありがんが否定できない場合などです。脂肪肝多くの場合肥満を合併していますが、減量が最も有効な治療であり7%以上の体重減少が目標になります。

膵臓ガン疑いでこちらに通って半年ごとに検査しています(身内が)
半年間の間で症状が変わってないか心配です。半年で大丈夫でしょうか?

どんな疾患で半年毎に検査しているかが重要ですが、多くの場合は膵のう胞です。膵のう胞は良性疾患がほとんどであり、それ自体の治療は必要ありません。しかしながら、膵のう胞がを持っている方の1%程度(100人に1人)に膵癌が発生することが知られており、フォローが必要です。半年以内で進行することはまれであり、膵のう胞を持っている方が、膵がんに進行したとしても2~3年はかかると言われています。そのため、半年毎の検査で早期発見は十分に可能と思います。

炎症性腸疾患の中で治療について薬や手術の話がありましたが、以前便移植が話題になったことが(テレビで)ありましたが、今は便移植は治療としてはどうなのか知りたいと思いました。

炎症性腸疾患において、便移植はまだ研究段階のものであり保険診療として認められておりません。