乳腺科
2017/07/15

乳房再建とは

乳がんの治療のために切除された乳房のかたちを再現する事を目的とした手術です。乳がんのため乳房を失うことは女性にとって大きな損失です。それを少しでも緩和するために考案された技術です。

近年、乳がんの手術はできるだけ切範囲を小さくし乳房を温存する方法が標準的な術式となってきています。しかし、無理に温存術を行なおうとすると病変が十分に取りきれずに局所再発の可能性が高くなったり、また乳房の形がくずれてしまう恐れもあります。それよりは乳房をしっかり切除して、乳房を再建する方が美容上に満足のいく結果になることがあります。

乳房再建術には、自家組織(自分の身体の一部)を移植する方法と、人工物を用いる方法があります。また再建する時期も乳房切除と一緒に乳房をつくる同時再建(一期再建)と、切除後に期間をおいてからの二期再建(異時再建)の方法があります。

患者さんはそれぞれ、乳がんの種類・病期・治療内容が異なり、どの再建術であっても一長一短があります。年齢や職業、費用、生活スタイル、そしてどんな乳房にしたいのか、などを考慮し、自分にあった方法を選択していくことが大切です。

自家再建

遊離腹直筋皮弁、下腹部穿通枝皮弁(当院では主に二期再建で使用します。)

下腹部に横切開を入れ腹部の脂肪と最小限の筋肉を血管ごと切除し、乳房のふくらみを形成する方法です。採取した組織の血管は顕微鏡を用いて胸部の動脈・静脈をそれぞれ血管吻合します。十分なボリュームが得られる難易度の高い再建術のひとつです。乳房切除の際にエキスパンダー(組織拡張器)を挿入し皮膚を伸ばして行うと、より綺麗な仕上がりになります。

広背筋皮弁(同時再建または二期再建)

自分の背中の皮膚と筋肉を使って乳房のふくらみを形成する方法です。広背筋皮弁で得られるボリュームはそれほど多くないので、部分切除後の部分的再建や小さいサイズの乳房切除後に用いられる事が多くなりました。

大網再建(同時再建)

大網は胃と大腸に付着してカーテンのようにおなか全体を包んでいる脂肪組織です。胃の血管により影響を受けており、この胃の血管をつけて大網を切除します。この切除には腹腔鏡を用いるため際とその他、数カ所に5~10mm大のちいさな孔をあけて操作を行なうので、他の術式に比べて傷は最小限におさえることができます。乳房の切除範囲は患者さんの腫瘍の大きさ、広がりで異なります。ボリュームに制限があるので、一般的に広背筋と同様の部分再建として使用します。この方法は当院独自の再建方法で、当院独自の手術法なので、まだ一般的な治療ではありませんが、現在までに200例以上の経験があり、1例の腹壁瘢痕ヘルニア以外、短期長期的に重篤な合併症は認めておりません。しかしその手術手技により腹腔内合併症の可能性、その他予期できない合併症の可能性はあります。

インプラント(人工物による再建)

手術をしていない方の乳房の大きさに合わせてシリコンバックを挿入する方法です。まず、乳がん切除の際もしくは、切除数年後にエキスパンダーという皮膚を伸ばすための組織拡張器を挿入します。その後、外来通院で皮膚の拡張を行い(通常約6ヶ月間)、最終的に人工乳房(インプラント)に入れ替えて完成します。自家組織と異なり、身体の他の部位に傷をつくることはありません。