乳腺科
2017/07/13

乳がんの種類と病期

乳がんは、いくつかの大まかな分類の仕方があります。
特に②の乳がんの顔つきと③乳がんの広がりが、治療や予後に大きく関わってきます。さまざまなタイプの乳がんがありますので医師によく説明を受けてください。

① 発生による分類

乳房には乳汁を作る小葉と呼ばれる部分と、そこでできた乳汁を乳頭まで運ぶ乳管からなっています。乳管から発生する乳管癌が最多数で約90%を占めています。またその他に粘液癌などの特殊系の乳がんがあります。

② 分子生物学的観点からの分類(顔つき)

乳がんの性質を表す、薬物療法を選択するときの重要な手がかりです。特にエストロゲンやプロゲステロンなど女性ホルモンの影響を受けるか、HER2(癌細胞に栄養を取り込む働きをする蛋白質)を持っているか、Ki-67(細胞分裂の割合)などの悪性度の指標値などが治療方針の決定に重要になってきます。主に以下の5つに分類されます。

サブタイプ 女性ホルモン HER2 Ki67高値 推奨される薬物治療
ルミナルA + ホルモン療法
ルミナルB + + ホルモン療法 ± 化学療法
ルミナルB + HER2 + + 不問 ホルモン療法 + 化学療法 + 抗HER2療法
HER2 + 不問 化学療法 + 抗HER2療法
トリプルネガティブ 不問 化学療法

③ 病期による分類(広がり)

腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、遠隔転移など、がんの進行度を評価した、いわゆる「ステージ」です。

Stage0
癌細胞が乳管の中にとどまっているごく早期の段階です。血管やリンパ管に流れている可能性は低く、手術や放射線などの局所療法が治療の主体となります。
StageⅠ−Ⅲ
がん細胞が乳管より外に出ており、血管やリンパ管に流れている可能性もある状態です。脇のリンパ節への転移がある場合もありますが、他の臓器(骨や肺 肝臓など)へは転移をきたしていない状態です。病変に合わせて局所治療と全身治療を行なっていきます。
StageⅣ
他の臓器への転移を来した状態です。全身治療が主体となってきます。病変を完全に取り除くことは難しくなりますが、治療で病気がコントロールできれば何十年も生存が可能な場合もあります。