
PET検査についての、よくあるご質問についてご説明します。
PETとはPositron Emission Tomographyの略で、ポジトロンを放出するアイソトープで標識された薬剤を注射し、その体内分布を専用のカメラで映像化する新しい診断方法です。
細胞はブドウ糖をエネルギー源としていますが、がん細胞は正常の細胞よりも活動性が高いため、ブドウ糖をたくさん取り込む性質があります。PETで使用される薬剤(FDG)はブドウ糖をアイソトープで標識したものですのでがん組織に多く取り込まれ、正常組織よりも強い放射線が放出されます。
放射線の量はがん細胞がブドウ糖を取り込む量、つまり活動性に比例するため、PETはがん細胞の機能(活動性)を反映する検査と言えます。
※ポジトロン
陽電子(プラスの電気を帯びた電子)。ポジトロンはマイナスの電気を帯びた電子に出会うと結合して消滅し、ガンマ線と呼ばれる放射線に変わります。このガンマ線は放射方向やエネルギーが一定しているため画像化するのに適しており、PET検査ではこのガンマ線を体外から観測して薬剤の体内分布を映像化します。
※アイソトープ
同位元素。原子番号は同じで質量数だけが異なった元素のこと。原子番号が同じ元素であるため、ある化合物の元素を同位 元素に置きかえてもその性質は全く変化せず、人体の生理活性物質であるブドウ糖やアミノ酸・ホルモンなどを調べるのに非常に好都合です。放射能を出す同位 元素を特に放射性同位元素(ラジオアイソトープ)と呼び、これを利用した医療用検査を核医学検査と呼びます。PET検査も核医学検査のひとつです。
※FDG
正確には18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)と呼び、グルコースの水酸基のひとつを18-Fに置換えした物質です。18-Fの半減期(放射能の強さが半分に減少するまでの時間)は約110分です。
がん細胞は正常の細胞よりも分裂が盛んに行われるため、グルコース(糖分)がたくさん必要とされます。そのため、18F-FDGという薬剤を静脈から注射しますと、がんの病巣にたくさん集まります。その様子を、PET装置で身体の外から撮影しますと、がんがどこにあるのか(存在の有無)、その大きさはどのくらいか(病巣の大きさ)がわかります。
PET検査で正確な診断ができると治療法や治療範囲を決めるのに大変役立ちます。特に予想外の病巣を見つけることで、治療範囲を正しく決められます。
PET検査用の薬剤はきわめて半減期(寿命)が短いので、病院内にある専用の施設でつくられます。その施設では、まず、サイクロトロンと呼ばれる装置でポジトロン核種を製造し、できたポジトロン核種を種々の方法で薬剤の元となる化合物に標識して、目的の薬剤をつくります。そして、純度試験や無菌試験を行い、合格した薬剤(18F-FDG)を実際のPET検査に用いるのです。
18F-FDGのPET検査は、ほとんどのがんの診療に有用です。肺がんや大腸がん、食道がん、膵がんなどの消化器系のがん、子宮がん、卵巣がんなどの婦人科系のがんや甲状腺がん、乳がん、悪性リンパ腫や骨腫瘍、悪性黒色腫などの診断にも役立ちます。
18F-FDGを用いるPET検査も、すべてのがんで役立つわけではありません。この薬剤は腎臓を経て尿に排泄されます。したがって、腎臓とか膀胱にがんがあっても、よく分かりません。前立腺がんでは、原発巣が膀胱と重なるため、区別 が難しいのです。
また、肝臓がん、胃がん、前立腺がんは超音波検査や内視鏡検査などの方が、PET検査より有用なことが多いようです。このように、PET検査が適しているものと適していないものがあります。
悪性の腫瘍では、18F-FDGの取り込みが高く、良性の腫瘍では18F-FDGの取り込みが低いことが多いようです。腫瘍への18F-FDGの取り込みの程度で、腫瘍の性質を診断するのですが、全ての腫瘍で悪性か良性かがきちんと鑑別 されるわけではありません。
PET検査では、ポジトロン核種を標識した薬剤を静脈注射しますので、わずかですが放射線被ばくがあります。
たとえば、18F-FDGという薬剤を注射してPET検査を1回受けますと、およそ2.2mSv(ミリシーベルト)になります。これは、人が地球上で普通 に暮らしていて、大地からの放射線や宇宙線、体内にある放射性元素によって被ばくする平均的な被ばく線量 である2.4ミリシーベルト※とほぼ同じ量 です。
CT検査を同時に受けた場合でも、多少被爆線量は増えますが、健康面に影響はありません。

※国連科学委員会の報告書による世界平均の被ばく量です
糖の代謝を正しく診断するためには、検査当日の朝食から、絶食をしていただく必要があります。水や砂糖無しのお茶は飲んでも良いのですが、甘いものは避けてください。お菓子も、検査が終わるまでがまんしていただきます。
薬剤を注射してから撮影までのあいだは、できるだけ安静にしていてください。筋肉を使うと薬剤が筋肉に集まってしまいますので、特にがんの診断のときには、診断が難しくなる場合もあります。
また、検査の直前には、膀胱内にある薬剤の代謝物を排出するために、排尿をしていただきます。
平成18年4月現在では、健康保険を適応できるPET検査(ポジトロン断層撮影)は、「15O標識ガス剤を用いた場合」と「18F-FDGを用いた場合」の2種類です。なお、18F- FDGを用いた場合には、てんかん、虚血性心疾患、悪性腫瘍(脳腫瘍、頭頚部がん、肺がん、乳がん、食道がん、膵がん、転移性肝がん、大腸がん、子宮がん、卵巣がん、悪性リンパ腫、悪性黒色腫及び原発不明がんに限る。)の診断を目的として、一定の要件を満たす場合に保険適応できることになっています。
日本核医学会・社団法人日本アイソトープ協会「PET検査Q&A」より引用